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情報公開・個人情報保護審査会答申第2号

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年1月24日更新

平成20年6月11日
新座市長 須 田 健 治 様
新座市情報公開・個人情報保護審査会
会 長 神 橋 一 彦

新座市個人情報保護条例第38条の規定に基づく諮問について(答申)
平成20年1月21日付け新人発第536号により諮問のあった保有個人情報部分開示決定に対する異議申立てについて、下記のとおり答申します。

1 審査会の結論

(1)平成15年度、平成16年度、平成17年度及び平成19年度新座市職員採用試験について、論文試験及び面接試験の評定票につき、新座市個人情報保護条例第2条第3項に規定する「保有個人情報」に該当しないとして不開示とした決定は、妥当である。

(2) 論文試験及び面接試験の評定集計表に記載された保有個人情報につき、その一部を不開示とした決定は、妥当である。

2 異議申立人の主張の要旨

(1)異議申立ての趣旨

  • 論文試験及び面接試験の個々の評定票に係る文書について、公文書として文書の開示を求める。
  • 平成19年12月25日付けで新座市長が行った保有個人情報部分開示決定について、その取消しを求める。

(2) 異議申立ての理由 

 異議申立人が主張する異議申立ての主たる理由は、異議申立書及び意見書(反論書及び陳情書)の記載によると、おおむね以下のとおりである。

  • 実施機関は、論文試験及び面接試験の個々の評定票が公文書に該当しないとし、その根拠について、(ア)実施機関の職員が組織的に用いるのは好ましくない、(イ)個人的に利用するメモであるから、各試験官に返却済みであり実施機関が保有していないと述べているが、これらの根拠は社会通念上合理性に欠けると考える。そもそも職員採用試験は市の業務であり、試験官が評定を決定するに至った事由及び資料は実施機関で共有すべき情報に該当するものである。情報を共有し、試験官の評定が公正に行われているか監督するのも実施機関の業務の一部であると考える。ゆえに、評定票は公文書として保存し、開示請求の際に速やかに開示することで、職員採用試験が公正に行われていることを証明するよう努めるべきである。
  •  公正かつ円滑な人事の確保のためにも、被評定者に対し自己にどのような評定が行われたかを開示することが妥当と思われる。
     実施機関は、試験官の職名や評点を開示することで、平均点周辺に評点が集中したり、質問や苦情、批判等がなされ、試験官の率直な意見が評価に反映されにくくなると言うが、それは少々短絡的であると考える。二次試験のみでほぼ合否が決定する現状において二次試験の評定は極めて重要であり、特別の理由のない限り平均点をつけるのは公平・公正な観点から見て極めて妥当な判断である。その中で著しく高い点数や低い点数をつけるのであれば相応の理由が求められて当然であり、説明し理解を得られると思う相応の理由があれば、苦情や批判等を心配する必要はない。
     試験官の職名や評点を開示することは試験官による独善的な評定の抑止にもなり、職員採用試験を公正に行う上で非常に重要である。
     そもそも何の判断基準も評定項目もなく70名以上に及ぶ受験者の面接を行い、かつ、その評定の配点が一次試験の倍もある現状において、果たして面接試験が公正に行われていると言えるのだろうか。試験官の経験や知識といった主観のみをよりどころにし、何の判断基準も評定項目もなく行われた評定が適切であるとは言い難い。
    本件の開示請求とは直接的な関係はないが、職員採用試験を公正に行うために、面接試験における客観的な判断基準及び評定項目の導入、面接試験の配点を他の試験同様50~100点に引き下げる、第三者機関による面接試験の監視などの措置も検討すべきである。

3 実施機関の説明の要旨

(1)本件開示請求に係る新座市職員採用試験に関する文書について

 本件開示請求に係る新座市職員採用試験に関する文書は、論文試験原稿、職員採用試験結果表、論文試験の評定集計表、論文試験の評定票、面接試験の評定集計表及び面接試験の評定票である。

(2) 論文試験及び面接試験の評定票の対象保有個人情報該当性について

 (1)のうち、論文試験及び面接試験の評定票(以下「本件評定票」という。)は、受験者の受験番号及び氏名、受験者に対する評点が記載された文書となっており、各試験官が論文試験及び面接試験において受験者の採点をするために用意されるものであって、受験者の最終評点を決定するためのメモであり、各試験官の個人的検討段階におけるものであるといえる。
 本件評定票の余白部分には各試験官の個人的な書き込みがなされた部分もあるが、合否の判定等においては何らの参考にもしておらず、論文試験及び面接試験の評価に当たっては、各試験官が出した評点のみに基づいて客観的に決定するものであることから、これらのメモを実施機関の職員が組織的に用いることはむしろ好ましくないとの判断の下、実施機関は、各試験官の評点を転記した後、本件評定票を各試験官に返却している。本件評定票の廃棄を含むその後の管理については各試験官に委ねており、公文書としての所定の管理を行っていないため、現に廃棄前の文書が存在していたとしても実施機関が保有している状況とは言い難いものである。
 よって、本件評定票は、新座市個人情報保護条例第2条第3項に規定する「保有個人情報」に該当しないものと判断する。

(3) 論文試験及び面接試験の評定集計表中の試験官の職名及び評点部分の不開示情報該当性について

 (1)のうち、論文試験及び面接試験の評定集計表(以下「本件集計表」という。)は、受験者の受験番号及び氏名、試験官の職名並びに試験官の受験者に対する評点及び各試験官の評点を合計した評点が記載された表となっている。
本件集計表中の試験官の職名及び評点が開示された場合、評点の差異から、評点の低い試験官に対し記録の内容に対する質問や苦情、批判等がなされることを避けるため、各試験官の評点が平均点に集中したりするおそれがある。このため、試験官の率直な意見が評価に反映されにくくなり、適正な評価に支障が生じることが十分に予想され、職員採用試験の適正な事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある。
 以上のことから、本件集計表における試験官の職名及び評点については、新座市個人情報保護条例第18条第5号エ「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」に該当すると判断し、不開示としたものである。

4 調査審議の経過

当審査会は、本件諮問事件について、以下のとおり調査審議を行った。

  • 平成20年1月21日 諮問の受理
  • 同年2月7日 実施機関から意見書(理由説明書)を収受
  • 同月8日 実施機関の職員から口頭説明の聴取、本件対象保有個人情報の見分及び審議
  • 同月18日 異議申立人から意見書(反論書)を収受
  • 同年3月4日 本件対象保有個人情報の見分及び審議
  • 同月27日 異議申立人から口頭意見陳述申出書を収受
  • 同年4月9日 異議申立人から口頭意見陳述辞退書及び意見書(陳情書)を収受
  • 同月10日 本件対象保有個人情報の見分及び審議
  • 同年6月2日 審議

5 審査会の判断

 当審査会は、実施機関及び異議申立人の主張を具体的に検討した結果、以下のように判断する。

(1) 本件評定票の対象保有個人情報該当性について

 本件評定票については、新座市個人情報保護条例(以下「条例」という。)第2条第3項に規定する「保有個人情報」に該当しないとする実施機関の主張に対し、異議申立人は、その認定・解釈について異議を述べているので、その点について検討する。
 条例第2条第3項に規定する「保有個人情報」は、新座市情報公開条例第2条第2項に規定する「公文書」に記録されているものに限られ、同項は、「この条例において「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。」と規定しているが、本件評定票が同項ただし書のいずれにも該当しないことは明らかである。
 そこで、本件評定票が同項にいう「公文書」に該当するか否かについて検討すると、新座市情報公開条例第2条第2項にいう「公文書」とは、ア行政機関の職員が職務上作成し、又は取得したこと、イ文書、図画及び電磁的記録であること、ウ当該行政機関の職員が組織的に用いるものであること並びにエ当該行政機関が保有していること、の4つの要件を満たすものであると解される。
 そこで、まず、アの要件について検討すると、本件評定票は、実施機関の職員が職員採用試験の採点に当たり作成したものということができ、アの要件を満たす。また、イの要件についても、本件評定票は書面であることが認められるから、イの要件も満たすことは明らかである。
 次に、ウの要件について検討する。ウの要件の「組織的に用いる」とは、その作成又は取得に関与した職員個人の段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において、業務上必要なものとして利用され、又は保存されている状態のものを意味すると解するのが相当である。
 そして、現に作成され、又は取得された文書が、どのような状態であれば組織的に用いるものといえるかについては、文書の作成又は取得の状況(職員個人の便宜のためにのみ作成し、又は取得したものであるかどうか、直接的又は間接的に管理監督者の指示等の関与があったものであるかどうか)、当該文書の利用の状況(業務上必要として他の職員又は部外に配布されたものであるかどうか)、保存又は廃棄の状況(専ら当該職員の判断で処分できる性質の文書であるかどうか、組織として管理している職員共用の保存場所で保存されているものであるかどうか)等を総合的に考慮して実質的な判断を行うのが相当であるから、以下、これらの点について検討する。
 当審査会において、試験官の一人が保有していた「論文試験の評定票」及び「面接試験の評定票」を見分したところ、当該評定票は、No.、職種、受験番号、氏名、フリガナ及び評価欄により構成され、評価欄には評点のみが記載されていた。
 そして、試験終了後、当該評定票の評価欄に記載された評点が「論文試験の評定集計表」及び「面接試験の評定集計表」にそれぞれ転記され、各試験官の評点の合計点により合否を決定していることが認められた。
 また、当該評定票には、評価項目や特記事項等を記載する欄はなく、余白部分に若干の書き込みが認められるが、当該書き込みは、試験官の個人限りの備忘録的メモであり、その内容が当該集計表に特に転記されているわけでもなく、合否の判断に関係するものではないことが認められた。
 したがって、本件評定票は、試験が終了し、本件集計表に転記した時点でその文書としての役割を終えることとなり、その後の評定票の処分の方法についての特段の定めはなく、個々の試験官の判断で処分されている。
 そうすると、本件評定票は、実施機関が合否決定を行うための資料となる本件集計表を作成するに当たり、個々の試験官が自らの権限と裁量で行う採点を集計する便宜のために作成された試験官の個人使用のための文書であって、職員採用試験の合格者を決定する際に直接使用されるものではなく、組織的に使用されるものとは言えないというべきである。
 このような本件評定票の利用及び保存等の状況に照らすと、本件評定票は、実施機関の組織において利用され、又は保存されているとは言えないことから、上記エの要件を判断するまでもなく、新座市情報公開条例第2条第2項に規定する「公文書」には該当せず、したがって、条例第2条第3項に規定する「保有個人情報」にも該当しないと解すべきである。

(2) 本件集計表中の試験官の職名及び評点部分の不開示情報該当性について

 当審査会において、実施機関から「論文試験の評定集計表」及び「面接試験の評定集計表」の提示を受け、確認したところ、本件集計表には、受験者の受験番号、氏名及び各試験官の職名、受験者に対する評点並びに各試験官の評点を合計し、換算した点数が記載されていることが認められた。
 実施機関では、本件集計表に記載された情報のうち、試験官の職名及び評点が開示された場合、評点の差異から、評点の低い試験官に対し記録の内容に対する質問や苦情、批判等がなされることを避けるため、各試験官の評点が平均点に集中したりするおそれがあり、条例第18条第5号エに該当するとして、不開示とすることが妥当であると主張している。これに対して異議申立人は、その認定・解釈に異議を述べているので、その不開示情報該当性について検討する。
 当審査会が、実施機関に確認したところによれば、市職員採用試験における面接試験は、単に知識あるいは学力の到達程度をみるのではなく、新座市が求める資質を受験者が有しているかどうかを見極めるものであり、試験官が受験者との対話を通じて受験者を評価するという面接試験にあっては、客観的かつ一律の評価基準を設定することは困難であり、職務経験を積んだ試験官による主観的判断を基本として合否の判断を行わざるを得ないものであるということであった。
 そして、そのような試験であるがゆえに、これに不合格となった者が、単に自分が不合格とされた理由を知りたいと思うだけでなく、場合によっては、当該面接試験の公平性や透明性に疑念を抱いたり、あるいは、試験官の資質そのものに疑念を抱いたりすることも有り得ると思われる。
 そうすると、仮に各試験官の職名及び評点を開示した場合には、試験官が受験者から評価の妥当性について質問されたり、評価に対する苦情や批判等を受けたりするおそれがあることは否定できない。このことは、本件集計表中の評点のみを開示とし、職名を不開示としたとしても、既に面接時に試験官が受験者と相対して、試験官の職名を名札により明らかにした上で面接を行っていること、そして、本件集計表における試験官の並び順から、試験官及び評点を容易に特定し得ると思われることから、各試験官の職名及び評点を開示した場合と同様であると考えられる。
 条例第18条第5号本文の「おそれ」の程度については、抽象的な可能性では足りず、ある程度具体的な蓋然性が要求されるものと解されているが、本件の場合、試験官は、全員市職員であり、受験者全員の面接を行っていること、そして、受験者は試験官全員の職名を認識し得る状況にあることにかんがみると、個別の試験における判断に際して、試験官に心理的・精神的圧迫感が生じるおそれは否定できず、試験の適正な実施・遂行に支障を及ぼす具体的なおそれがあると考えられる。
 また、合否の決定は、実施機関が組織として決定する事項であり、試験官の一人一人がその評点について説明責任を負うものではないということ、そして、本件の場合、実施機関は開示請求に基づき、異議申立人に対して論文試験及び面接試験の得点を既に開示しており、当該得点は、上記のとおり、各試験官の評点の合計点により導き出されたものであるということにかんがみれば、上記のような想定されるおそれを覆してもなお、各試験官の評点の部分についてまで個々に開示する相当性は認められないものと思われる。
 以上の理由により、条例第18条第5号エの規定に基づき、本件集計表中の試験官の職名及び評点の部分を不開示とした実施機関の判断は相当であると認められる。

(3) 異議申立人のその他の主張について

  • 面接試験の評定資料及び判断基準について
     異議申立人が、異議申立書において、面接試験の評定資料及び客観的な判断基準に係る文書を開示すべきであると主張しているのに対し、実施機関は、面接試験の評定資料及び客観的な判断基準は存在しないと主張しているが、面接試験の評定資料が仮に存在したとしても、本件請求の対象は「自己を本人とする保有個人情報」、すなわち、公文書に記載されている個人情報であるところ、これらの文書に個人情報が記載されていないことは明らかであるため、そもそも本件請求の対象となる保有個人情報には該当しないものと認められる。
  •  その他意見について
     異議申立人は、職員採用試験制度及びその事務処理についても改善を求める旨の主張をしているが、当審査会は、実施機関の行った決定の妥当性について判断するものであり、職員採用試験制度そのものの改善を求める主張は、本件において、当審査会の判断するところではない。
     また、異議申立人は、その他種々主張するが、いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。
     よって、「1 審査会の結論」のとおり判断する。

(答申に関与した委員の氏名)
神橋 一彦、白鳥 敏男、内野 伸之、川島 鈴子、並木 實