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平成24年度第3回文化財保護審議委員会会議録

ページID:0012940 更新日:2013年2月14日更新 印刷ページ表示

開催日時

平成25年2月14日(木曜日)
午前10時から午後1時20分まで

開催場所

新座市観光プラザ2階交流ルーム「さえずり」

出席委員

根岸茂夫、小林英郷、岩崎信丈

事務局職員

生涯学習課長 池田 秋義
同副課長兼学芸員 斯波 治
同主任兼学芸員 川端 真実
同主事兼学芸員 川畑 隼人

会議内容

  1. 開会
  2. 挨拶
  3. 委嘱状の交付について
  4. 委員長及び委員長職務代理の選任について
  5. 議題
    (1) 埼玉県指定有形文化財建造物平林寺惣門・三門・仏殿改修工事について(現地視察)
    (2) 国指定天然記念物平林寺境内林現状変更について(現地視察)
    (3) その他(市指定有形文化財建造物普光明寺山門修復工事について)
  6. 閉会

会議資料

・ 次第

・ 平林寺惣門・三門・仏殿改修工事仕様書及び図面…資料1

・ 国指定天然記念物現状変更等許可申請書…資料2

・ 普光明寺山門修復工事…資料3

・ にいざ歴民だより第3号

公開・非公開の別

公開(傍聴者0人)

その他の必要事項

欠席:石山 哲夫委員、佐藤善信委員、蔵持重裕委員

途中退席:池田 秋義 課長、川畑 隼人 主事

審議の内容(審議経過、結論等)

1 開会

午前10時開会(司会:斯波副課長)

2 挨拶

開会に当たり、池田生涯学習課長からあいさつがあった。

3 委嘱状の交付について

任期満了に伴い、現職委員を再任し、委嘱状を机上交付した。

4 委員長及び委員長職務代理の選任について

新座市文化財保護審議委員の会議等に関する規則第6条に基づき、委員の互選により、根岸委員長と石山委員長職務代理を選任する。

5 議題

(進行:根岸委員長)

(1) 埼玉県指定有形文化財建造物平林寺惣門・三門・仏殿改修工事について

現地にて視察を行うため、議題(1)について事務局から概略を説明する。

事務局 議題(1)は、建造物の耐震化と拝観客へのバリアフリー化、修業空間の整備が主目的となる。長期間にわたる工事であり、所有者は早急に着手したいとの申出があったため、埼玉県文化財保護審議委員の建造物の専門家と相談をした。その結果、改修に先立って現状と工事歴の調査が必要ではないかとの意見があった。また、後世にも今回の改修内容が明確に伝わるように、詳細な記録をとるべきとの意見があった。

(2) 国指定天然記念物平林寺境内林現状変更について

現地にて視察を行うため、議題(2)について事務局から概略を説明する。

議題(2)は、天然記念物の再生を主目的とし、雑木林の一画を試験的に伐採して、生育状況の観察をする実験区を設けるものである。平林寺境内林保存管理計画は策定中であるが、それに先行して実験区の視察をお願いする。

その後、審議を中断し、議題(1)と(2)の現地へ移動する。議題(1)については、改修工事の請負業者立会のもと、建造物を視察した。

 <議題(1)について、現地での質疑応答>

業者 惣門については、柱が礎石からずれているが、建物自体には問題ない。改修工事では、建物平行移動と石畳の整備を行う。石畳が浮いていたり、ずれていたりするので、一度はがしてからやりなおす。割れているものについては、新しく類似の石に敷き直す。

委員長 石畳の改修に先立って、地盤の考古学的調査が必要ではないか。

事務局 埼玉県の担当者と調整中である。

委員 雨落ち溝がないが、雨水は浸透させるのか。

業者 現状はモルタル敷きだが、おそらくその下にも溝はなかっただろう。モルタルについてもやりなおす。惣門自体の解体はしない。
三門についても、目地が広がっている石畳を敷き直す。礎石と柱にずれは見られない。参道と雨落ち溝の間にある段差はなくす。雨落ち溝にはぐり石が敷かれているが、その下はコンクリートになっており、所有者から管理がしにくいとの意見がある。2階部分の建具については一度解体し、再利用する。欠落している金具についても補修・復元する。2階の床板には隙間があるので増し張りする。

委員 参道についてもバリアフリー化するのか。

業者 三門と参道の段差をなくしていく予定である。
仏殿については、土間コンクリートをやり直し、水勾配の確保と湿気対策のため、基礎を12cm高くする。そのために建物を吊上げて作業を行う。軒下のたたきもやり直し、本来あるべき地覆石を新設する。

委員 基礎の工事に伴って、上屋は解体するのか。

業者 建物自体は解体しない工法をとる。
内部については、現状はモルタル敷きに格子模様が施されているが、これを敷き瓦(磚セン)に変える。

事務局 敷き瓦については、県の文化財保護審議委員の意見もあり、保管されていた約25cm四方の敷き瓦と同じ仕様に変更してもらった。

委員 仏殿内部のモルタル敷きは、いつ実施された工事だろうか。二十三世・円応老師の晋山式の時だろうか。

事務局 記録が残っていないが、その可能性もある。工事に際しては、薪小屋の近くにプレハブを仮設する。

<議題(2)について、現地での質疑応答>

事務局 雑木林を維持・管理していくために、実験区を設けて高木化した樹木を伐採し、萌芽更新の観察と実生の育成を行う。平林寺境内林の指定地の中で、最も植生が貧弱な場所を対象地を選んでいる。一部の樹木を除いて、31本・約1,000平方メートルを伐採予定である。文化庁に現状変更の許可申請が必要な行為にあたる。

委員 伐採した樹木の使い道はあるのか。

事務局 所有者で利用する量には限界もある。市内業者に依頼し、木材チップにして使うという手もある。

<審議再開>

 (1) 埼玉県指定有形文化財建造物平林寺惣門・三門・仏殿改修工事について

事務局 現地視察を経て、委員の皆さまの御意見を伺いたい。

委員長 現状に至るまでの調査で不分明なところが多い。その中で、もう一度、記録の整理が必要である。また、これまでの改修工事の中で、創建当時から変化してきたものがある。修理歴をきちんと調査した上で、限りなく創建時に近づけるような改修にしてほしい。そのためにも、現状の調査が必要で、それを基準に今後を考えるべきである。改修すべき点は確かにあるが、根本的にすぐに改修すべき緊急の課題とは思えなかった。以上のような課題を解決した上で、工事に入ってほしい。滅多にない機会であるので、調査と記録はしっかりさせたい。

委員 工事業者は記録業者ではないので、その点は注意しなくてはならない。

委員長 説明した業者は信頼のおける人だと思うが、これまでの管理が杜撰だったと思う。

委員 その場しのぎの維持・管理という印象だった。

委員長 仏殿内部の床も、寛文3年(1963)当時から磚が敷いてあったかというのは疑問が残る。

委員 当時はコンクリートやモルタルといった工法はなかったはずだ。

委員長 磚を敷き、モルタルを敷く過程で、だんだんと礎石が見えなくなっていったように思う。

事務局 モルタル敷きにする以前の状況は記録が残っていない。

委員長 モルタル敷き以前に、礎石が見えづらくなっていたので、モルタルを敷いてしまったのでないか。当初はたたきの土間で、次に磚を敷いたのだと思う。

委員 委員長の意見のとおり、仏殿内部は軒下と同じたたきだったと思う。外だけをたたきにしていたと考えるよりも、内外が一体と考える方が自然だ。

委員 惣門・三門については、拝観客への配慮として直すことは問題ないと思う。

委員 他の委員の意見に賛同するが、石畳の改修については遅いくらいだと印象がある。ただし、改修に先立つ記録と調査は必要だと思う。
別件になってしまうが、平林寺内の野火止用水にかかる橋は、いつかけられたものなのか。

委員 現状変更の届出が必要な案件ではないのか。

事務局 所有者から相談があり、野火止用水に手を加えなければ、届出の必要はないと判断した。前老師も、墓への参拝客や緊急車両の通行を考えていたので、それをふまえて橋をかけ替えたのではないかと思う。

委員 せめて木製の橋にしてほしかった。

委員 近代的な石製の橋で、色も白かった。

委員長 景観への配慮が足りない。緊急車両への配慮はわかるが、色や素材についてはもう少し検討すべきだったのではないか。

委員 野火止用水の他の場所にも、あのような立派な橋はない。

事務局 今後、景観に配慮するという点についても、申請者に指導をしていきたい。

委員 周辺の環境に溶け込むような橋にしないと、あの橋はアンバランスだと感じた。

委員 前の橋は、あのような形態ではなかった。

事務局 前の橋の幅だと、軽トラックは通れるが、普通のトラックは通れなかった。そのため、新しい橋はあのような幅になったと考えられる。文化財の立場として、指導が足りなかったと思う。

委員長 経緯はわかったが、もう少し形態を考えてほしかった。

事務局 他の現状変更と比較しても、決して好ましい状況ではないと思う。

委員長 議題1に戻って、他に御意見はあるか。

事務局 業者による説明の中で、三門の改修にアクリルを用いるという話があったが、この点についてはいかがか。

委員 アクリルは望ましい素材だとは思わない。やむを得ないのか。

委員長 建築の専門家でないと、判断が難しいかもしれない。

事務局 県の文化財審議委員で、建築分野の方に相談したい。

委員 今回の改修工事の請負業者は、社寺専門なのか、一般的な工務店なのか。

事務局 社寺専門と聞いている。また、社長が日本伝統建築技術保存会会長(選定保存技術保存団体)や文化財修理技術保存連盟理事長を務めているので、信頼できると思う。

委員長 担当者の方も信頼できる。

事務局 所有者の方が、改修工事に積極的かもしれない。

委員長 所有者の意向を酌みつつ、文化財としての改修をしているように感じた。

事務局 あえて「アクリル」という言葉を出したようにも受け取れた。

委員 所有者の意向も伝えたかったのだろう。

事務局 花頭窓の修理歴についても指摘があった。

委員長 本来、障子だったものを板に直したのだろう。

委員 障子に戻るのか。

事務局 そのような意見があれば、所有者側に伝える。

委員 本来あるべきものは、あった方がよい。

事務局 元々の姿について調査をしてみて、極力復元していくようにしたい。

委員長 その意味でも、修理歴をよく調査する必要がある。

委員 仏殿の防災設備はどうなっているのか。煙感知器などはあるのか。

事務局 屋外に放水銃と、屋内に火災報知機が付いているが、煙感知器までは付いていない。

委員長 この機会に、防災・防犯設備についても整備してはどうか。

委員 文化財防火デーの防災訓練は実施しているのか。

事務局 消防署の指導のもと、1月24日に放水銃の確認とホースの連結作業を行った。

委員長 三門の2階には、毎日上がっているのか。

事務局 行事の時だけだと聞いている。以前、雲水が上った際に、屋根裏にハクビシンが棲みつき、糞がひどかったと聞いた。害獣対策も必要だろう。他の建物についても同様だ。シロアリ対策については昨年度実施している。

委員 仏殿の中でも修行しているのか。あまり人が入った形跡なかった。

事務局 中には入る機会は少ないようだ。

委員長 花頭窓の隙間があるので、動物の侵入は防ぎきれないが、これを機に現状を変えない程度に対策してほしい。また、創建から現在に至るまでの過程を記録に残してほしい。

事務局 改修工事に伴う、発掘調査あるいは試掘調査についても、県の委員と相談しながら方法や場所等を検討したい。下手に掘削すると、建物の地盤を弱める恐れがある。

委員長 仏殿の礎石の下にコンクリートを流すという工法にも疑問が残る。建築工法として仕方のないのかもしれないが、建築の専門家の意見を伺いたい。

委員 向こう100年は耐えられる土台を作ってほしい。

委員長 柱等に古色を付けている箇所がなかったか。

事務局 過去の修理の中で、三門の半解体工事の際などは、新材に古色を付けている。最初は違和感があるが、時間がたつとなじんでくる。

委員長 よく見ると判別できる。部材を取り換えていくのが日本の建築技術であるが、できるだけ元の材を活かしてほしい。

事務局 磚について御意見を伺いたい。かつての磚が保存されていたが、これを活用して敷くか、全てを新しいものに変えるか、どちらがよいか。割れているものも多く、業者側も再利用は無理だと考えているようだ。

委員長 新しくしても仕方のない個所だと思う。現状では、元々、磚が敷いてあったかどうかも確認できていない。個人的には、元々はたたきで、そこに後から磚を敷き、それで礎石が埋まったように思う。

議題1の改修工事については、県や市の文化財審議委員や担当者の意見を組み入れるとい条件付きで、承認してよいか。

(委員一同承認)

(2) 国指定天然記念物平林寺境内林現状変更について(現地視察)

委員長 雑木林の再生を図る事業だと思うが、委員の皆さまはいかがか。個人的には、もっと実験区を増やしてもいいと思っている。この数十年で高木化しているが、雑木林は切りながら再生していくものである。

事務局 平林寺境内林の保存管理計画策定の中で、業者を入れつつ、伐採していくことになるではないか。

委員長 できれば地域の方々と一緒に実施できるとよいが、修業の場でもあり、本来は作務の一部と言える。ただ、時代の変化とともに、地域の連携も視野に入れる必要があるだろう。

委員 クズハキを行っている人もいる。

事務局 現在では2軒くらいになってしまった。

委員 将来的に、実験区が成功した場合は、次の実験区を設けるのか。

事務局 平林寺境内林保存管理計画を策定する中で、伐採の方法についていくつか素案がある。以前は間伐を想定していたが、今回は皆伐を想定している。

委員 雑木林は30年サイクルで、場所を変えながら伐採するのではないか。

事務局 現状で切るためには、毎年1haくらいは伐採する必要があるが、それには資金的な問題も出てくる。その費用は誰が負担するのか。国の補助金も、継続的にもらえるとは限らない。

委員 手始めに実験してみるということで理解した。

委員 アカマツには松喰い虫の被害があり、モミジの植栽も多くなっていた。雑木林の保存管理と散策路沿いの植栽の整合はどうなっているのか。

事務局 建造物の周辺には、禅宗の修行道場としての雰囲気も残すべきだろうし、雑木林の景観も保全する一方、モミジを目当てにした拝観客も多い。これらの兼ね合いが必要となってくる。

委員長 議題2の現状変更については、承認してよいか。

(委員一同承認)

(3)その他(市指定有形文化財建造物普光明寺山門修復工事について)

事務局 檀家から相談があり、屋根瓦の劣化が著しいとの指摘があった。瓦にずれがあり、水が浸入して下地が傷んでいるおそれがある。建物自体が崩壊する危険性もあるので、修理を実施したい。他の箇所についても併せて修理を実施したいと相談されている。このような現状をお伝えし、細かい個所については、委員の皆さまの現地視察が必要となってくるだろう。

委員長 本日、承認の採決が必要な事案ではないということか。

事務局 現在、修復工事の方法について細部を調整している状況である。請負業者の宮大工によると、建設当初の技法で修復するのは難しい。漆喰は使いたくないようだ。

委員長 漆喰を使わないで屋根が修復できるのか。

事務局 その点の確認をとっている。瓦については、新しいものに変える予定だ。

委員 瓦も復元して焼くのか。

事務局 今の瓦を元にして焼く予定だ。

委員 金具も新調すると書かれているが、統一性は取れているのか。

事務局 金具も復元をして設置する予定である。

委員長 指定時に調査は実施しているか。

事務局 専門家に調書を作成してもらっている。ただし、建物自体についての記述が中心で、細かい金具までは言及されていない。

委員長 棟札はあるのか。

事務局 建物の年代と掲げられている額の年代は一致しておらず、額の方が古いと聞いている。建物は江戸時代の文化・文政期に作られたと推定される。その頃、大和田の氷川神社の彫刻も作られているので、嶋村一門による作の可能性もある。ただ、文献は残されていない。

委員長 そのような調査と細かな記録も取りながら進めないと、修理歴がわからなくなっていってしまう。

事務局 普光明寺山門ついては、図面すら作成されていなかった。今回、修理に際して初めて図面を作成してもらい、修理箇所を明示してもらった。

委員 築地塀はあったのか。

事務局 存在しているが、おそらく後から作られたものだと思う。脇の小さな門は一緒に作られた可能性がある。

委員長 元々は極彩色に彩色されていたのか。

事務局 聞いた話だが、彩色は昭和期にペンキで塗ったという話がある。今回も塗装したいという意向があったが、ペンキは止めてほしいと伝えている。指定当時に戻すのであれば、色はペンキ以外で復元してもらいたい。ただ、そもそも色を塗ってよいかは、今後の審議が必要だと思う。

委員長 嶋村一門の作であれば、色は塗らない。

委員 屋根が壊れる恐れがあるなら、修理自体は早くやった方がいいと思う。

事務局 これから具体的に話が進んでいくと思う。おそらく、平成25年春から夏にかけて細かい調整が進むだろう。

委員長 具体的に話が進んでいく過程で、以上のような要望を伝えてほしい。

(委員一同承認)

(3)その他(報告)

事務局 市民会館の再開に伴い、新装記念イベントとして5月11日(土曜日)に「伝統芸能祭」と題した市指定無形文化財による公演と展示・子ども呈茶を実施し、5月12日(日曜日)にテレビ東京「開運なんでも鑑定団」の「出張鑑定大会」を招致した。

6 閉会

委員長 長い時間ありがとうございました。(午後1時20分閉会)


新座市文化財保護審議委員会