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予防接種の副反応について
予防接種と聞くと、副反応が心配なためワクチンの接種に対して消極的になる方もおられますが、現在、日本で使用しているワクチンは、世界で使われているワクチンの中でも優れており、副反応の頻度も少ないと考えられています。
しかし、人間の体の性質は一人ひとり違うため、程度の差はありますが、副反応が生じる場合もあります。大切なことは、ご自身の体のことをよく分かっているかかりつけの医師の診察を受け、相談して、よく理解してから予防接種を受けましょう。
ヒブの副反応
接種したところの発赤(44.2%)、腫れ(18.7%)、硬結(しこり)(17.8%)、痛み(5.6%)、発熱(2.5%)、不機嫌(14.7%)などが見られます。販売開始から平成30年6月30日までに医療機関から重篤として報告された例(報告者が重篤として判断するもの)の発生頻度は、10万接種当たり1.5となっています。
小児用肺炎球菌の副反応
接種部位の紅斑(67.8~74.4%)、腫れ(47.2~57.1%)、発熱(32.9~50.7%)などが見られます。平成25年10月28日から平成30年6月30日までに医療機関から重篤として報告された例(報告者が重篤として判断するもの)の発生頻度は、10万接種当たり1.9となっています。
B型肝炎の副反応
これまでの成績では接種を受けた者の10%前後に倦怠感、頭痛、局所の腫脹(はれ)、発赤、痛み等がみられたと報告されていますが、新生児・乳児についても問題はなく行われています。平成25年4月1日から平成30年6月30日までに医療機関から重篤として報告された例(報告者が重篤として判断するもの)の発生頻度は、10万接種当り0.6となっています。
BCGの副反応
接種後10日頃に接種局所に赤いポツポツができ、一部に小さいうみができることがあります。この反応は接種後4週間頃に最も強くなりますが、その後は、かさぶたができて、接種後3か月頃までには治まり、小さな傷あとが残るだけになります。これは異常反応ではなく、BCG接種により抵抗力(免疫)がついた証拠です。自然に治るので、包帯をしたり、バンソウコウをはったりしないで、そのまま清潔に保ってください。ただし、接種後3か月を過ぎても接種のあとがジクジクしているようなときは、医師に相談してください。
副反応としては、接種をした側のわきの下のリンパ節がまれに腫れることがあります。通常、放置して様子を見てもかまいませんが、時にただれたり、大変大きく腫れたり、まれに化膿して自然に破れてうみが出ることがあります。このようなときは医師に相談してください。
コッホ現象
結核菌に感染していた人がBCG接種を行うと、接種後10日以内に接種した場所が赤く腫れたり、うみを持つことがあります(接種後数日間の早い段階で発現します)。これをコッホ現象と呼びます。このような反応が見られた場合は、速やかに医療機関を受診してください。
四種混合(百日せき・ジフテリア・ポリオ・破傷風)の副反応
接種部位の発赤、腫れ、硬結(しこり)などの局所反応がほとんどで、7日目までに約18%見られます。硬結(しこり)は少しずつ小さくなりますが、数か月残ることがあります。通常、高熱は出ませんが、接種当日に発熱が見られることが0.5~1.8%あります。販売開始から平成30年6月30日までに医療機関から重篤として報告された例(報告者が重篤として判断するもの)の発生頻度は、10万接種当たり1.1となっています。
不活化ポリオの副反応
接種したところが赤くなったり、腫れたり、発熱することなどがあります。また、傾眠状態や易刺激性(不機嫌)が見られたとの報告があります。販売開始から平成30年6月30日までに医療機関から重篤として報告された例(報告者が重篤として判断するもの)の発生頻度は、10万接種当たり0.6となっています。
麻しん(はしか)・風しん(三日ばしか)混合の副反応
主な副反応は、発熱(1期約16.6%・2期約6.0%)、発しん(1期約4.3%・2期1.0%)です。その他にも接種したところが赤くなったり、腫れたり、硬結(しこり)、リンパ節の腫れ、じんましん、関節痛、熱性けいれんなどが見られることがあります。まれに見られる副反応としては、アナフィラキシー、血小板減少性紫斑病、脳炎、けいれんなどがあります。
平成25年4月1日から平成30年8月31日までに医療機関から重篤として報告された例(報告者が重篤として判断するもの)の発生頻度は、10万接種当たり0.9となっています。
水痘ワクチンの副反応
副反応はほとんど見られませんが、時に発熱・発疹が見られ、まれに局所の発赤・腫れ・硬結(しこり)が見られることがあります。平成25年4月1日から平成30年8月31日までに医療機関から重篤として報告された例(報告者が重篤として判断するもの)の発生頻度は、10万接種当たり0.9となっています。
日本脳炎の副反応
予防接種後健康状況調査(平成25年度)によると、37.5℃以上の発熱は、第1期初回の翌日に最も多く2.4%、次いで接種当日は1.9%でした。接種部位の腫れは、第1期初回翌日が1.4%、2日目0.4%でした。局所反応は第2期での発生が最も多く、1日目がピークで3.8%でした。
平成24年11月1日から平成30年6月30日までに医療機関から重篤として報告された例(報告者が重篤として判断するもの)の発生頻度は、10万接種当たり0.7となっています。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
ワクチン接種後に、まれに発生することがあるといわれる脳神経系の病気です。麻疹(はしか)、水痘(みずぼうそう)、おたふくかぜ(ムンプス)、インフルエンザなどのウイルスや、マイコプラズマなどの病原体感染の後に起こることもあるといわれていますが、きっかけと思われる感染症やワクチンがなく発症したADEMも報告されています。
ワクチン接種は毎年たくさんの子どもに行われるので、ウイルスなどの病原体の感染によるADEMや原因不明のADEMがワクチン接種後に発症する可能性もあり、ADEMがワクチン接種によるものかどうかの区別が困難です。ワクチン接種後の場合は、通常接種後数日から2週間程度で発熱、頭痛、けいれん、運動障害等の症状があらわれます。ステロイド剤などの治療により、後遺症を残すことなく、回復しますが、まれに運動障害や脳波異常などの神経系の後遺症が残る場合があると言われています。
二種混合(ジフテリア・破傷風)の副反応
接種局所の反応が最も多く、発赤、腫れ、硬結(しこり)などの反応が、接種後7日までに約31%認められます。局所反応は数日で自然に治りますが、硬結(しこり)は小さくなりがらも数か月残ることがあります。接種後の37.5℃以上の発熱は、0.5%未満です。
販売開始から平成30年6月30日までに医療機関から重篤として報告された例(報告者が重篤と判断するもの)の発生頻度は、10万接種当たり0.2となっています。
HPV(子宮頸がん予防)ワクチンの副反応
接種したところが痛んだり(82.5~99%)、赤くなったり(30.2~88.2%)、腫れ(25.4~78.8%)などの局所反応と、軽度の発熱(5.6~5.8%)、倦怠感などの全身反応が見られますが、その多くは一過性です。
販売開始から令和5年6月末までに医療機関から重篤として報告された例(製造販売業者又医療機関が重篤として判断するもの)の発生頻度は、接種1万人当たり、サーバリックスまたはガーダシルは約5人、シルガード9は約3人となっています。
接種の際に、強い痛みやしびれ、接種後に注射した部分以外のところで痛みや手足のしびれ・ふるえなどの気になる症状や体調の変化が見られた場合は、すぐに医師にご相談ください。
高齢者肺炎球菌予防接種の副反応
予防接種の注射の跡が、赤くなったり、腫れたり、痛んだり、硬くなったりすることがあります。また、発熱、悪寒、全身のだるさ、頭痛、筋肉痛などがみられることがあります。いずれも2日から3日のうちに治りますが、症状には個人差があります。
非常に稀ですが、ショック(アナフィラキシー様反応)やじんましん、熱性けいれん、血小板減少などが現れることがあります。
高齢者インフルエンザ予防接種の副反応
予防接種の注射の跡が、赤みを帯びたり、腫れたり、痛んだりすることがありますが、通常2日から3日のうちに治ります。また、熱が出たり、寒気がしたり、頭痛、全身のだるさなどがみられることがありますが、通常2日から3日のうちに治ります。また、接種後数日から2週間以内に発熱、頭痛、けいれん、運動障害、意識障害の症状が現れる等の報告があります。
非常に稀ですが、ショックやじんましん、呼吸困難などが現れることがあります。
副反応が起こったら
予防接種の後、まれに副反応が起こることがあります。また、予防接種と同時に、ほかの感染症がたまたま重なって発症することがあります。予防接種を受けた後、接種したところのひどい腫れ、発熱、ひきつけなどの症状がありましたら、接種医又は最寄りの医療機関で必ず診察を受けてください。
- 通常見られる反応
ワクチンの種類によっても異なりますが、発熱、接種したところが赤くなったり、腫れたり、硬結(しこり)、発しんなどが比較的高い頻度(数%から数十%)で認められます。通常、数日以内に自然に治るので心配の必要はありません。 - 重い副反応
予防接種を受けた後、接種したところのひどい腫れ、高熱、ひきつけなどの症状がありましたら、医師の診察を受けてください。
副反応の症状が予防接種後副反応疑い報告基準に該当する場合は、医師から独立行政法人医薬品医療機器総合機構へ報告が行われます。
ワクチンの種類によっては、極めてまれ(百万から数百万人に1人程度)に脳炎や神経障害などの重い副反応が生じることもあります。このような場合に、厚生労働大臣が予防接種法に基づく定期の予防接種によるものと認定した時は、予防接種法に基づく健康被害救済の給付の対象となります。 - 紛れ込み反応
予防接種を受けたしばらく後に、何らかの症状が出現すれば、予防接種が原因ではないかと疑われることがあります。しかし、よく検査をすると、たまたま同じ時期に発症した他の感染症などが原因であることが明らかになることもあります。これを「紛れ込み反応」と言います。 - 予防接種による健康被害救済制度について
定期接種によって引き起こされた副反応により、医療機関での治療(入院相当)が必要になったり、生活に支障が出るような障がいを残すなどの健康被害が生じた場合には、予防接種法に基づく給付を受けることができます。健康被害の程度に応じて、医療費、医療手当、障がい年金、死亡一時金などの区分があり、法律で定められた金額が支給されます。
ただし、健康被害が予防接種によって引き起こされたものか、別の要因によるものなのかの因果関係を国の審査会にて審議し、予防接種によるものと認定された場合に給付を受けることができます。
現在の救済制度の内容については、予防接種健康被害救済制度(厚生労働省)をご参照ください。