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日本でふつうにみられる葬法は、土葬と火葬です。
現在は火葬が優勢ですが、かつては土葬が大半でした。土葬の場合は埋葬した場所に墓を建てるのが一般的ですが、なかには死者を埋葬する墓地とはまったく別の場所に墓を建てる例があります。それが両墓制(りょうぼせい)です。
両墓制は、死者の遺体を埋める「埋墓(うめばか)」と、その人の霊を祀(まつ)って石碑を建てる「詣墓(まいりばか)」とが同時にあることからそのように呼ばれています。
市内、大和田の普光明寺(ふこうみょうじ)には、このような風習が江戸時代初頭からあり、近年まで境内にある墓地には墓などの石塔を建て、旧川越街道沿いの字、岾上(はけうえ)と、大和田と清瀬を結ぶ道路沿いで、集落から比較的離れた所に位置している字、三本木(さんぼんぎ)に死者を埋葬していました。
祀り方は、葬った「埋墓」ではその霊を祀らずに「詣墓」に霊だけを移し迎えて祀ります。
市域の両墓制は、火葬によりその姿が大きく変化していきます。これらは今後消えつつある民俗風習のひとつと言えるでしょう。
大和田一丁目、三丁目地内 埋墓(うめばか)と詣墓(まいりばか)